お見合い政略結婚~極上旦那様は昂る独占欲を抑えられない~
「店長! いつも思うんですけど、ここのお客さんって皆富裕層ですよねー。接待に購入されるお客様に大企業が多いこと……」
「まあ、土地柄なのかなあ」
「しかもこの前! スーツ姿の超絶男前の子連れパパが来たんですよ~! 領収書いりますかって一応聞いたんですけど、"この子のおやつなので大丈夫です。ありがとう""って微笑みながら帰っていって……! ほんとイケメン過ぎてぶっ倒れそうでした」
「ほおー、子連れでスーツ……。保育園に迎えに行った帰りによってくれたのかな? 嬉しいね」
「しかも子供も美少女で……。イケメンと幼女の組み合わせ、ほんと最高過ぎて仕事捗りました!」
 二人でそんな雑談をしながら陳列を終え、レジの準備を済ませると、百貨店の営業開始を知らせる放送が店内に流れ始めた。
 どの店舗も一斉にお辞儀をして、入ってくるお客さんに「いらっしゃいませ」と丁寧に声をかける。
 私も深々とお辞儀をし、お客さんを招き入れる。
 ありがたいことに、毎日個数限定のフルーツ大福目当てに、一番にうちのお店に向かってくれるお客さんも多い。
 今日も大福目当てに、多くのお客さんが訪れ、朝から大忙しだ。
「いらっしゃいませ。フルーツ大福は残り三つとなっております」
 お店に並ぶ列に向かって、私は少しだけ声を張り上げる。
 レジは茉奈ちゃんの方が得意なので彼女に任せて、私は購入に迷われているお客さんの相談に乗ることに徹していた。
 そんなとき、ぽんと肩を誰かに叩かれ、私は「はい!」と勢いよくうしろを振り返った。
 すると、そこには私服姿の岡田さんがいた。
「やっほー、今日はオフだから買いに来てみた」
「岡田さん! いらっしゃいませ」
「無性にここのおはぎが食べたくなっちゃってさ」
 そう言って笑う岡田さんの指には、結婚指輪がついている。
 一年前に、ずっと同棲していたという彼と結婚した岡田さんは、家庭とアイドル追っかけ活動を両立している。
 岡田さんの、ありあまる体力には本当にいつも感心する。
「井山さんは元気ですか?」
「元気元気。高臣さんに似てるアイドル教えたら、今はそっちに熱中してるよ」
「本当にただただ高臣さんの顔が好きだったんですね……」
「ほんと、単純すぎて呆れるわ。まあ仕事はしっかりしてるから何も困ることはないよ」
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