お見合い政略結婚~極上旦那様は昂る独占欲を抑えられない~
「傷つけたくないから先に話しておくが、もし君が少しでもこの縁談に興味があるのなら、政略的な関係性だという前提を承知の上で、ここから先を進めたいと思っている」
 まさか、こんなにストレートに話を持ち掛けられるなんて。
 本当なら少しは傷つくような場面なのかもしれないけれど、私は傷つくどころかその話に興味がわいた。
 ずっと聞きたかった質問があり、私はすかさず挙手をした。
「あの、ひとつ聞いてもいいですか。うちのような古い和菓子屋と仕事をしても、高臣さんの会社にとっては微々たるもの過ぎると思うのですが……。正直目的が見えなくて、そこが不安です」
 正直にそう言うと、高臣さんは一瞬だけ意外そうな顔をして、「そんなことを思っていたのか」とつぶやいた。
 むしろ、私も政略的な結婚前提で来たので、そんなことしか気になっていなかったのですが……。
「高梨園の和菓子は、一般にはお取り寄せも請け負っていないにも関わらず、メディアにも何回も取り上げられ、知名度は抜群だ。規模が大きければ、間違いなく日本のトップ3には入る和菓子屋だ。実際に何度も出店のオファーがきていただろう。十月のリニューアルオープンに向けて、もしそんな高梨園をうちの百貨店で出せたなら、話題性は抜群だ」
「でも、それにしても……、結婚を代償にしてまでの収益はないかと思いますが」
「君が思っている以上に、俺は結婚にこだわりはない。どうせ結婚するなら、仕事上で新しい可能性を持った相手としたいと思ったまでだ」
「なるほど……」
 でも、それだけじゃまだ納得ができない。
 ビジネス上で新しい可能性を持ったお相手なら、彼ならたくさんいたはずだ。
 全然納得しきっていない私を見て、高臣さんは「まだ疑いがあるか」と問いかけたので、私は馬鹿正直にこくんと頷いてしまった。
 しばらくの沈黙が流れたが、高臣さんはふと私が手に持っていたものに気づいて、「それは」と指をさしてきた。
「あ、これ、ご挨拶のときにお渡ししようとしていたうちの和菓子です。すみません、なぜか緊張してバッグと間違い持ってきてしまいました……」
 部屋においておけばよかった……。慌てていたことがばれてしまい恥ずかしい。
 赤面しながら和菓子を後ろ手に隠すと、高臣さんは私のそばにふと近づいてきた。
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