お見合い政略結婚~極上旦那様は昂る独占欲を抑えられない~
 そんなことまで心配してくれるなんて、高臣さんはじつは本当に優しい人なんだな……。
「俺の父はともかく、極力周りには政略結婚と知られないように、努めるべきだ」
「そうですね。周りの人を不安にさせることはよくないですから。バレないように、演技頑張ります!」
 拳をグッと握って頑張る宣言をしたが、なぜか高臣さんはますます眉間にしわが寄っている。
 まだ何か不安な要素があるにだろうか……。
 申し訳なく感じた私は、更に安心させるために力強く宣言した。
「私、絶対高臣さんに恋愛感情抱かないように努めるので、安心してください……!」
「…………」
 ハキハキとした口調で、誠意を込めて伝えたつもりだが、高臣さんの眉間のしわは濃くなるばかりだった。
 いったいなぜ……? 今さらタイプでないことに気づいて、この縁談に乗り気でなくなったとか……⁉
 長い長い沈黙に不安な気持ちでいっぱいになっていると、突然グッと腰を抱き寄せられた。
「え……、高臣さ……」
 高臣さんに広い胸に突然抱き寄せられ、私は迂闊にもドキドキしてしまった。
 好きにならないようにしても、男性経験の少なさのせいで、どうしても動揺してしまう。
 突然の行動にキャパオーバーしそうになっている私に、彼は真剣な声で、耳元で甘く囁く。
「……分かった。凛子はもう、俺のものだ」
「え……」
「もう撤回はできないぞ」
 政略結婚なのに、突然どうしてそんな甘い言葉を言ってくるのか――。
 恋愛偏差値が低い私には難しい課題過ぎて、理解が追いつかない。
 分からない部分が多いまま、私と高臣さんの政略結婚はスタートしたのだった。
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