お見合い政略結婚~極上旦那様は昂る独占欲を抑えられない~
「ありがとうございます……! あと、うちの出店が確定した際は、店舗に立って働きたいんです。もちろん、売り上げに貢献できるよう、たくさん勉強して準備しますので……」
「……ああ。半年後ならちょうど、凛子も今の仕事の契約を終えるし、リニューアルオープンも終わる。すべてがベストタイミングだ。ぜひ頑張ってほしい」
「はい、もちろん努めます! あ、あと最後に、すごくしょうもない質問なのですが……」
 急にもじもじし始めた私を見て、高臣さんは「なんだ?」と問いかける。
 聞くのがとても恥ずかしいけれど、一応確かめておきたいこと……。
 それは、いったいどこまで"夫婦"らしく過ごすのか、ということだった。
「す、スキンシップ的なことは……するのでしょうか」
「当然だ」
「そうですよね! 野暮なことをお聞きしてしまい……え? 今なんて……」
 カッと顔が熱くなり、私は動揺して左右に目を泳がせた。
 予想外の質問に、なんと返していいのか分からないでいると、高臣さんは淡々と語りだす。
「凛子は、ご両親に心配をかけたくないんだろう」
「は、はい……。気持ちのない……形だけの結婚をさせたくなかったようなので……」
「俺自身も、政略結婚をすべて断ってきた身として、今更ポンと政略結婚をしたとバレたら、理由を説明することが面倒だ」
「そうですよね。バレないように努めなくては……」
 そこまで言うと、高臣さんがガタンと音を立てて椅子から立ち上がり、こちらへ近づいてきた。
 ドクンドクンとありえないほどのスピードで心臓が拍動し、ますます体の熱があがっていく。
 目を合わせられずに俯いていると、高臣さんの美しい手の甲でするりと頬を撫でられた。
「……てっとりばやく夫婦らしい空気感をつくるには、触れ合うことが一番だと、そう思わないか」
「お……、思うのでしょうか……ふつうは……」
 何を言っているんだ、私は。
 あまりの緊張感に、なぜか疑問形で返してしまった。
 高臣さんの色香にあてられて、脳が正常に物事を判断できなくなっていく。
 そしてついに、彼の手が顎に添えられて、強制的に目を合わせる形となった。
 その瞬間、何かがプツンと切れてしまった私は、恥ずかしいくらいに取り乱して自分の顔を手で隠す。
「む、無理です! あの、もう少し時間をもらえたらきっと……!」
「時間? そんなもの必要ない」
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