お見合い政略結婚~極上旦那様は昂る独占欲を抑えられない~
永亮はしばらく黙って私の顔を見続けてから、箒を持っていない方の手で私の頬をムニッと指で挟んだ。
「お前、顔色悪いぞ。上流階級の暮らしが体に合ってないんじゃないか」
「なにふんの……! はなひへ」
無理やり抵抗して永亮の手を引きはがし、私は思わずドンと彼の胸をどついた。
なぜ見飽きた永亮の顔を至近距離で見なきゃならないのだ……。
「もう、ふざけるの止めて」
私は勢いよく永亮から箒を奪い取ると、彼を押しのけて店の外へ出た。
……『顔色が悪い』と指摘したときの永亮の顔は、本当に私を心配したような表情をしていたので、一瞬調子が狂ったけれど。
あっという間に無事に営業が終わり、調理場を片づけるだけとなった。
今日はとても天気が良くて暑かったので、あんみつがよく売れた。
イートインで食べていく方も多く、飲み物の売り上げもそこそこだ。
ずっと立ちっぱなしで疲れた体に水分を補給していると、父が私の名を呼んだ。
何か真剣な話があるのだろうか……。
お茶を持ちながら、呼ばれた通りイートインのスペースへ向かうと、永亮が横を通り過ぎた。
「玄さん、お疲れ様でした」
「おう、永亮。また明日頼む」
父が永亮に手を振って挨拶をすると、永亮はガラガラと引き戸を開けて店から出て行った。
お客さんがひとりもいない薄暗い店内に、父が真剣な顔をして座っている。私も丸テーブルを挟んで、目の前の席に座り、父の顔を見つめる。
「凛子。……高臣くんとは上手くやっているか?」
「うん、まだ掴めていない部分もあるけど……、なんとかやってるよ」
「そうか。ならよかった」
きっと高臣さんのことを聞き出したいのだろうと思っていたから、この質問は予想の範囲内だった。
同棲をはじめてから、実家に小まめに連絡を取っていたなかったことを申し訳なく思う。
「じつは高臣くんの会社と、本格的に契約を進めている」
「うん」
「凛子。もう後戻りはできないが……、大丈夫か?」
父が不安そうに訊ねてきたので、私はその不安を拭うように笑顔で答えた。
「うん、そのつもりだよ。まだ正直生活は不慣れなところもあるけど、高臣さんは想像以上に優しくて、よくしてもらってる」
むしろ、優しくされすぎて、私情が生まれてしまうことが怖いほどだ。
なんて、父には絶対に言えないけれど。
「お前、顔色悪いぞ。上流階級の暮らしが体に合ってないんじゃないか」
「なにふんの……! はなひへ」
無理やり抵抗して永亮の手を引きはがし、私は思わずドンと彼の胸をどついた。
なぜ見飽きた永亮の顔を至近距離で見なきゃならないのだ……。
「もう、ふざけるの止めて」
私は勢いよく永亮から箒を奪い取ると、彼を押しのけて店の外へ出た。
……『顔色が悪い』と指摘したときの永亮の顔は、本当に私を心配したような表情をしていたので、一瞬調子が狂ったけれど。
あっという間に無事に営業が終わり、調理場を片づけるだけとなった。
今日はとても天気が良くて暑かったので、あんみつがよく売れた。
イートインで食べていく方も多く、飲み物の売り上げもそこそこだ。
ずっと立ちっぱなしで疲れた体に水分を補給していると、父が私の名を呼んだ。
何か真剣な話があるのだろうか……。
お茶を持ちながら、呼ばれた通りイートインのスペースへ向かうと、永亮が横を通り過ぎた。
「玄さん、お疲れ様でした」
「おう、永亮。また明日頼む」
父が永亮に手を振って挨拶をすると、永亮はガラガラと引き戸を開けて店から出て行った。
お客さんがひとりもいない薄暗い店内に、父が真剣な顔をして座っている。私も丸テーブルを挟んで、目の前の席に座り、父の顔を見つめる。
「凛子。……高臣くんとは上手くやっているか?」
「うん、まだ掴めていない部分もあるけど……、なんとかやってるよ」
「そうか。ならよかった」
きっと高臣さんのことを聞き出したいのだろうと思っていたから、この質問は予想の範囲内だった。
同棲をはじめてから、実家に小まめに連絡を取っていたなかったことを申し訳なく思う。
「じつは高臣くんの会社と、本格的に契約を進めている」
「うん」
「凛子。もう後戻りはできないが……、大丈夫か?」
父が不安そうに訊ねてきたので、私はその不安を拭うように笑顔で答えた。
「うん、そのつもりだよ。まだ正直生活は不慣れなところもあるけど、高臣さんは想像以上に優しくて、よくしてもらってる」
むしろ、優しくされすぎて、私情が生まれてしまうことが怖いほどだ。
なんて、父には絶対に言えないけれど。