お見合い政略結婚~極上旦那様は昂る独占欲を抑えられない~
しかし、のちのちあの兄妹で家に来られることはもっと面倒だ。
俺がもっと成長して上の立場になったら、この一族の面倒ごとはすべて一掃してやろうと思っているが……。
「……分かった。少しだけ顔を出そう」
「よかったです。食事会場はなんと銀座なのでここから徒歩五分です」
「計ったような場所だな」
のちのちの面倒ごとを考えて、俺が一旦顔を出すことにしようと腹を括ったことで、咲菜はコロッと機嫌がよくなった。
そして、すぐにメッセージで店の地図を送ってきた。
「凛子ちゃんには悪いけど……、家に来られるよりはマシですもんね」
咲菜の言葉を聞きながら、俺は凛子へ送るメッセージを考える。
正直今、こんなことをしている場合ではない。
――なぜなら、出張中の癒しとして、凛子の写真を求めたら、高梨園の若手職人とのツーショットが送られてきたのだ。
あの一瞬、嫉妬で気が狂いそうになった。
実際、そのとき手に持っていた空き缶を握りつぶしてしまった。
何度か高梨園へ出店の条件説明に行ったときに見かけていたアイツは、"永亮"という、凛子の幼なじみだと聞いた。
一際、不愛想で気難しそうな空気感を漂わせていたので、妙に印象に残っている。
いや、もしかしたらあのときから、敵意むき出しだったのかもしれない。
「兄さん、怖い顔してるけど大丈夫? あ、元々か」
「…………」
とにかく、早く終わらせて早く帰る。
そして"これ"を凛子に――はやく渡すのだ。
俺は取りに帰った紙袋に入った荷物と、黒いジャケットを掴んで、走って会社を出た。
〇
会場について二時間が経過し、一流レストランをわざわざ貸し切ってまで行われた食事会が、ようやく終わろうとしていた。
「いやー、まさか、引く手あまたの高臣君より先に結婚してしまうなんて、本当に悪いなあ」
顔を真っ赤にした和夫が、七三分けにした額を光らせながら、本日何十回目の台詞を言い放つ。
幸いにも、食事会のほとんどが和夫の自慢話で終わったため、俺の婚約の話題にはそこそこしか触れられなかった。
和夫の母親である里佳子さんももちろんいたため、終始心を無にして過ごしたけれど、それでも一分が一時間のように感じられた。
「和夫君、本当におめでとう。では、俺はここで」
俺は胡散臭い笑みを浮かべて早々に席を立ち、すぐに帰宅する準備をはじめた。
俺がもっと成長して上の立場になったら、この一族の面倒ごとはすべて一掃してやろうと思っているが……。
「……分かった。少しだけ顔を出そう」
「よかったです。食事会場はなんと銀座なのでここから徒歩五分です」
「計ったような場所だな」
のちのちの面倒ごとを考えて、俺が一旦顔を出すことにしようと腹を括ったことで、咲菜はコロッと機嫌がよくなった。
そして、すぐにメッセージで店の地図を送ってきた。
「凛子ちゃんには悪いけど……、家に来られるよりはマシですもんね」
咲菜の言葉を聞きながら、俺は凛子へ送るメッセージを考える。
正直今、こんなことをしている場合ではない。
――なぜなら、出張中の癒しとして、凛子の写真を求めたら、高梨園の若手職人とのツーショットが送られてきたのだ。
あの一瞬、嫉妬で気が狂いそうになった。
実際、そのとき手に持っていた空き缶を握りつぶしてしまった。
何度か高梨園へ出店の条件説明に行ったときに見かけていたアイツは、"永亮"という、凛子の幼なじみだと聞いた。
一際、不愛想で気難しそうな空気感を漂わせていたので、妙に印象に残っている。
いや、もしかしたらあのときから、敵意むき出しだったのかもしれない。
「兄さん、怖い顔してるけど大丈夫? あ、元々か」
「…………」
とにかく、早く終わらせて早く帰る。
そして"これ"を凛子に――はやく渡すのだ。
俺は取りに帰った紙袋に入った荷物と、黒いジャケットを掴んで、走って会社を出た。
〇
会場について二時間が経過し、一流レストランをわざわざ貸し切ってまで行われた食事会が、ようやく終わろうとしていた。
「いやー、まさか、引く手あまたの高臣君より先に結婚してしまうなんて、本当に悪いなあ」
顔を真っ赤にした和夫が、七三分けにした額を光らせながら、本日何十回目の台詞を言い放つ。
幸いにも、食事会のほとんどが和夫の自慢話で終わったため、俺の婚約の話題にはそこそこしか触れられなかった。
和夫の母親である里佳子さんももちろんいたため、終始心を無にして過ごしたけれど、それでも一分が一時間のように感じられた。
「和夫君、本当におめでとう。では、俺はここで」
俺は胡散臭い笑みを浮かべて早々に席を立ち、すぐに帰宅する準備をはじめた。