お見合い政略結婚~極上旦那様は昂る独占欲を抑えられない~
 高臣さんと出会ってから、ずっとジェットコースターに乗っているかのような毎日だ。
 だけど、余計な感情を何もかも全部取っ払って、今残る気持ちは、ひとつしかない。
 私は、そのひとつの感情を、心からつぶやいた。
「嬉しい……」
 思わずぽろっと、涙がこぼれ落ちる。
 高臣さんは、こんな私をどうして認めてくれたんだろう。
 分からない。だけど、政略結婚という形だけでなく、高臣さんは、私の存在ごと受け入れようとしてくれているのだ。
 自分でも想像した以上に、そのことが嬉しくてたまらない。
 私は、婚約指輪をじっくり見る暇もなく、高臣さんに抱き着いた。
「嬉しいです。ありがとうございます……っ」
「凛子……」
 子供の様に抱き着いて、私は嬉し涙をこれ以上見られないようにした。
 そういえば、高臣さんに自ら触れたのは初めてで、抱き着いてから自分が大胆な行動をしたことに気づいた。
 だけどもう、触れずしてこの気持ちを伝えることは不可能だった。
 抱き着いたときに、一瞬高臣さんが驚いたように体をびくつかせたことが、さらに愛しい
 そして、背中に高臣さんの大きな手が回ってきて、ぐっと力強く抱き寄せられた。
「どうして、そんな風に思ってくださったんですか……?」
 抱き締められながら、私は疑問に思ったことをそっとぶつける。
 だって、愛のない政略結婚にしようと提案してくれたのは高臣さんで、私はそれを承知の上で一緒になったというのに。
 個人的な感情など、邪魔だったのでは……。
「……その理由は、今話さないとダメか」
「い、いえ、無理にとは……!」
「……いや、無理なわけじゃないが、自分から恋愛感情はいらないと宣言した手前、言いづらい」
 そう言いながら、高臣さんはすっと私を体から離して、私の目を見つめる。
 しばらく本当に言い出しづらそうに目を逸らして、沈黙が続いた。
 まるで学生の告白前のような空気に、私まで照れくさくなってしまう。
「……凛子の笑顔に一目惚れした」
「へ?」
「政略結婚の提案をした直後の話だ。本当に直前まで愛のない結婚でいいと思っていた」
 高臣さんは、いつもより早口で意外な発言をしたので、私は思わず間抜けな声を出してしまった。
 私の笑顔に、ヒトメボレ……?
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