お見合い政略結婚~極上旦那様は昂る独占欲を抑えられない~
 そのことが確定してから、元々ストイックだった凜子の様子は少しずつ変わった。
 仕事が終わってから、深夜にひっそりとキッチンで和菓子づくりに励んでいる凛子を何度も見てきた。
「高臣さん。私、銀座店の目玉となるような、新しい和菓子を開発したいんです。今はまだ試行錯誤段階ですが、まだ高梨園を知らない新しい人にも手に取ってもらえるように」
「そうだったのか。だから最近、遅くまで励んでいたんだな」
「あっ、気づていたんですね。起こしてしまってたらすみません!」
「いいんだ。俺はこのまま打ち合わせに行くが、凛子も色んな和菓子との出会いがあるといいな」
「はいっ、ありがとうございます」
 そう言ってほほ笑む凛子は、とても輝いて見える。
 この笑顔を守るためなら、どんなことだってしてあげたいと思うが、凛子はきっと自分の手で未来を切り開いていきたいのだろう。
 だったら俺は、彼女の未来をサポートするまでだ。
 俺は、凛子の頭にぽんと手を置いて、「またあとで。ホテルに迷わないように」と言って、一旦別れを告げた。
 荷物はお互い先にホテルに送ってあったので、俺はそのまま仕事場へと向かったのだった。
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