お見合い政略結婚~極上旦那様は昂る独占欲を抑えられない~
 ――私だって、たまにはこの人の感情を乱してやりたい。
 そんな気持ちが暴走して、私は寝ている高臣さんに顔を近づける。
 そして、整った唇に自分の唇を一瞬だけ押しあてた。
 すぐに顔を離したが、こんなキスひとつで心臓がドキドキと高鳴っている……。
 自らキスをしたのは、引っ越してすぐに、高臣さんに迫られてしたとき以来だったので、緊張してしまった。
 こんなキスごときで高臣さんが動揺なんてするはずがないんだけれど……。
 でも、ちょっとした達成感がわいてきて、私はしてやったりな気持ちで寝顔を見つめた。
 すると、ふいに高臣さんの口が動いた。
「……今のは、どういうキスなんだ?」
「えっ! 高臣さん、起きてたんですか!?」
「いつも眠りは浅いんだ。ドアが開く音で半分起きていた」
 は、恥ずかしい……。
 顔から火が出るほど羞恥心でいっぱいになり、私は赤面したまま目を泳がせる。
 高臣さんはソファーの上から私を見下ろし、穏やかに笑っている。
「……で、俺に怒りながらキスをしてくるっていうのは、どんな感情なんだ」
「ご、ごめんなさい……あまり深い意味は」
「まったく、凛子は本当に……」
 気まずくて目を逸らしていたけれど、高臣さんにくいっと指で顎を上向かされてしまう。
 高臣さんと目が合うと、彼は珍しく少しだけ照れているような表情をしているように見えた。
「へっ……」
 滅多に見れない表情を見て、私は思わず声を上げてしまう。
 調子が狂ったような高臣さんは、照れ隠しをするようにそのまま私に軽いキスをして、少し不機嫌そうにつぶやいた。
「どうしてそんな、予想できない行動ばかりするんだ……」
「た、高臣さ……」
「これ以上愛おしい気持ちにさせて、どうしたいんだ君は」
「きゃっ」
 突然起き上がった高臣さんに、脇の下に手を挟まれ、そのままソファーの上へと移動させられた。
 向かい合うような形で、高臣さんの足の間に膝立ちさせられた私は、彼の肩に両手を置いたまま目を丸くする。
 高臣さんはいつのまにか獣スイッチが入っていて、私の太ももを大きな手でするりと撫でた。
 捲れたスカートを見て羞恥心が煽られた私は、慌てて高臣さんの手を振り払おうとする。
 しかし、彼の手は全く動かない。
「さっき、寝ている間に"私でいいのか"と言っていたな」
「あっ……、えっと、それは」
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