お見合い政略結婚~極上旦那様は昂る独占欲を抑えられない~
 あの自信のない言葉も聞かれていたのか。
 気まずくなり思わず目を伏せるが、高臣さんはそんな私の顔を下から覗き込み見つめる。
「俺には、凛子以外いない」
「え……」
「だから、そんな言葉二度と言わないでくれ。愛が伝わっていないのかと、不安になる」
「高臣さん……」
「これ以上俺の溺愛が暴走したら、凛子も困るだろう」
「暴走って、ふふっ……」
 高臣さんが真剣な顔で言うのがおかしくて、私は思わずふきだしてしまった。
 そんな私のことを、高臣さんは穏やかな顔で見つめてくれている。
 本当だ。この人の目には、本当に私しか映っていないのだ。
 うぬぼれとか、自意識とか、そんなことではなくて、私はこの人がくれる愛を信じたい。
 だから私も、高臣さんへの愛を、まるごと彼に信じて受け取ってほしい。
 高臣さんには、私に愛されていると、いつも自信に満ち溢れていてほしい。
 だって、私はこの人を、一秒たりとも不安な気持ちになどさせたくないのだ。
 そしてそれは彼も同じ気持ちなのだと……。
「私、高臣さんを見てると、色んなものを与えたくなるんです」
「与えたくなる? そんなこと、生まれて初めて言われたな……」
「あっ、いや、高臣さんが物欲しそうという意味ではなくですね……!」
 変なことを言いかけたと思い、私は慌てて両手をぶんぶんと横に振る。
 高臣さんの方が、誰かに何かを与えられる力は、はるかにあると言うのに。
 欲しいものはすべて手に入ってしまいそうな彼だと言うのに。
 ……でも、そんなこの人だからこそ、お金でも買えない、形もない、でも確かで温かな"愛しい"という気持ちを、惜しみなく与えたいと思うのだ。
 そういった、ものではない感情を与えたいと思うことが、"愛"というのならば、私は彼を心の底から愛してしまっている。
「高臣さん……好きです」
 再び、ちゅっと彼の唇にキスを落としてみた。
 私の服を脱がしかけて、獣モード全開だった高臣さんがロボットみたいに一瞬停止した。
 こっちから何かを仕掛けられることには、そんなに耐性がないのだろうか……。
 なんだか面白くてしばらく固まった彼を見つめていると、がばっと両手で腰を抱き寄せられた。
 私の胸に顔を埋めながら、高臣さんは困り果てたようにつぶやく。
「俺の弱点は、間違いなく凛子だな……」
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