俺様社長と溺愛婚前同居!?

「あ、あの……っ」


 近くないですか?

 そう聞きたいのに、鼓動が速まるばかりでうまく話せない。

 賢人さんの高い鼻が首筋に当たってる。その下にある柔らかな唇が肌に触れていて、そこがすごく熱い。


「け……んと、さん」

「ん?」


 これ以上密着していたら、胸が爆発しそう。今まで感じたことのない心拍数に戸惑う。

 それなのに、賢人さんは私を離そうとしない。


 これって、どういう状況なの?

 実家で飼っていた犬のように愛でてくれているってこと?

 それとも……夫婦のスキンシップの実演?


 賢人さんに慣れるようにと言われていたから、その練習なのだろうか。
 どちらにせよ、刺激が強くて身が持たない。


「結花、手を見せて」

「……うん」


 言われたとおりに左の手のひらを見せると、そっと大きな手が添えられる。


「傷、ちゃんと治ったんだ。よかった」

「うん、あれからすぐに傷は塞がったよ」


 数週間前に怪我をしたとき、賢人さんに病院へ連れて行ってもらったことを思い出す。私が話しかけても素っ気ない態度だったことが懐かしい。

 あのときは、不必要な会話はしてもらえなかったし、目もあまり合わせてもらえなかった。
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