俺様社長と溺愛婚前同居!?

 それなのに、今は――

「小さい手。指……細いな」

 私の手に指を絡ませて、耳元でそんなことを囁いてくる。


「結花は、いつから料理をしてるの?」

「あ、えーっと……中学生のころ、かな……。花蓮が料理好きだったから、手伝うようになって……」


 指と指の間に、彼の太い指が入り込んでくる。それが妙に色っぽく感じて、変な気持ちになる。

 手を繋いでいるだけなのに――何か、変な感じ。


「へえ。俺、料理できないから、尊敬する。短時間であんなに美味しい料理が作れて、盛り付けも上手だし」

「そんなこと……。花蓮のほうが上手だよ」

「そうかな」


 全てを捕らえられてしまいそうで、逃げなくてはいけないと離れようと体を捩るのに、逃がしてもらえない。


「俺は結花のほうが好きだけど」

「す……っ!?」


 好き……!

 その言葉に過剰に反応してしまう。ドクン、と大きく胸が鳴って、頬が熱くなっていく。
 好きっていうのは、料理のことって分かっているのに!


「結花のほうが美味しそうだし、見た目も俺好み」

「ほ、んと……? 嬉しいなあ……」


 深読みしてはいけない、と軽く流すのに、意味深な言葉を甘い声で囁かれる。
 こんなのだめ……っ。意識しちゃうよ。
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