俺様社長と溺愛婚前同居!?

 色気だだ洩れの笑顔を向けられて、呼吸の仕方を忘れてしまった。


 な、何、その笑顔~~っ!


 今までの冷たい態度からのふり幅が大きすぎてついていけない。


「いきなりキャラ変しすぎじゃない……? 私の知っている賢人さんじゃない……」

「これが俺の素だよ。俺は、誰にでも優しくするような性格じゃないんだ」

「だからって……」


 だからってこれはだめだ。
 同居生活一日目なのに、ギャップにやられそうになっている。恐るべし、ツンデレ。


「寝るときは、手を繋いでてくれる?」

「だ、だめ……そんなの」

「なんで? じゃあ、抱き締めて寝るよ」

「それはもっとだめ!」


 ふたりの距離を詰められて、太ももと太ももが触れるくらいの近さになる。


「手を繋いでてくれたら、変なことしない」

「それって、かなり問題発言だよ」

「はは、そうだろ? だから、手を繋いでいて」

「ううう……」


 変な提案に巻き込まれて、賢人さんの思惑通り手を繋いで寝ることになってしまった。少し距離を空けて寝ているものの、ぎゅっと握られた手に神経が集中して目が冴える。


「手を繋いでいて、寝にくくないの?」

「寝にくくないよ。落ち着く」

「へえ……」


 そうなんだ。私はドキドキしっぱなしで全然落ち着かないけど。

 こんなふうに男の人と手を繋ぐのは、お父さん以来だ。
 お父さんと手を繋いでいると思えばいいんだ、と自分に言い聞かせて目を閉じる。

「おやすみ、結花。また明日」

「うん、おやすみなさい」


 とはいえ、いつもと違う場所ではなかなか寝付けず……。


 すうすうと寝息をたてる賢人の美しい横顔を眺めて、朝方まで悶々と過ごすのだった。
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