俺様社長と溺愛婚前同居!?
「あ。もしかして、妹だと思われているかな」
「妹と手を繋ぐ奴がどこにいるんだ?」
「ここ……」
「俺は繋がない。というか、妹なんていないし」
水族館の前の発券機の前でそんな話をしていると、賢人さんがむすっとした表情で私を見つめた。
「ごめん、怒った?」
「怒ってない」
「うそ、怒った顔してるよ」
「結花と俺は、どこからどう見ても恋人同士に見えるよ」
そうなのかな……?
賢人は入場チケットを二枚買い、私の手を引いて入場ゲートをくぐった。
するとすぐにアーチ状になった水槽があり、悠々と泳ぐ魚たちが視界に入ってきた。
「わ……きれい」
「結花」
天上まで水槽になっていて、魚が気持ちよさそうに泳いでいる姿に見惚れていると、賢人さんに名前を呼ばれた。
彼のほうを見てみると、彼の顔が近づいてきて、ちゅっと軽いキスをしてきた。
「ちょ……っ」
「結花が変なことを言うから、お仕置きだ。水族館に来てキスをするふたりが、兄妹なわけないだろう」
あ、まだ怒ってた。
でもキスをしたあとは、もう機嫌が直ったみたいでいつもの笑顔が見られた。
水族館でキスなんて……すごく恋人っぽい。
意識しないようにしているのに、賢人といるとドキドキしっぱなしだ。
私のことなんて、本気で好きなわけがないのに。そう分かっているのに。
賢人さんといる時間が増えるたび、勘違いしそうになる。まだ一緒に住んで二日目なのに大丈夫なのかな……。
「行こう」
「うん」
手を繋いだまま、私たちは歩き出す。
癒されに来たはずなのに、隣にいる賢人さんにドキドキしすぎてそれどころじゃなかった。