俺様社長と溺愛婚前同居!?

 一目でも彼のことを見たいと思うあまり、数ヵ月前に引っ越してきたのだとか。

 神宮寺さんの気持ち、分かる気がする。

 好きな人を近くに感じられたら、嬉しいって気持ち、私も最近知ったから。

 一緒にいられたら嬉しい、いられなくても同じ空間だとか、近くにいると感じたらちょっとだけ幸せになるものだ。


「彼の相手の人……どんな人なんだろう。きっと素敵な人なんだろうな。逆に私よりも素敵な人じゃないと、祝福できないよ」

「そう……ですね」


 神宮寺さんの言葉に胸がズキンと痛む。

 神宮寺さんが胸を焦がれるほど愛している人の相手が、こんなちんちくりんな私だなんて。

 しかもちゃんと恋愛しているわけでもなく、お互いの利益のために結婚するような関係だなんて申し訳なさすぎる。

 ただ専属の料理人になるために、入籍しようとするなんておこがましいことなんだと改めて痛
感してしまった。


「結花ちゃんは彼氏いないの?」

「いませんね」


 嘘をついてしまった。彼氏というか、婚約者がいるのに。

 しかもそれは神宮寺さんの好きな人。

 何て最低な状況なのだろう。

「さ、お菓子食べて」

「ありがとうございます……」

< 142 / 177 >

この作品をシェア

pagetop