俺様社長と溺愛婚前同居!?
本気で好きになった女性とうまくいかず恋愛に期待していないからこそ、こんな専属料理人と入籍してしまおうと思ったに違いない。
「私って……邪魔者だよね」
ふたりの関係を邪魔する存在になるなんて嫌だ。
賢人さんのことが好きだからこそ、彼には幸せになってもらいたい。神宮寺さんもだ。
とにかく、ふたりには話し合う時間が必要だ。
賢人さんが帰ってきたら、話しを切り出してみよう。
一時間後。
いつも通りに仕事を終えて帰宅した賢人さんを玄関まで迎えにいく。
「おかえりなさい」
「ただいま」
一日働いて疲れているはずなのに、賢人さんは朝に別れたときと同じような爽やかさで微笑んでくる。
会社で見るときと全然違って、もうリラックスしているように感じる。
「結花」
「あ……っ」
玄関をから上がってきた賢人さんは、廊下に立っている私の腕を引き、胸の中に引き寄せる。
そしてぎゅっと抱きしめて、しばらく離さない。
どうしてそんなふうに抱き締めるの?
私で神宮寺さんの代わりが務まっているの?
本当は神宮寺さんにこうして欲しいんじゃないの?
そんな気持ちが浮かんできては、頭の外へ追いやって。
今はこのぬくもりに包まれている幸せを噛み締めたい。
「お風呂、沸かしてあるよ」
「うん」
「どうしたの? 疲れた……?」
「ううん、結花とこうしていたいだけ」
誰にも見せないような姿で甘えてくる賢人さんを見ていると、胸が大きく鳴って騒ぎ出す。
真に受けちゃいけないと思うのに、ドキドキしてしまう。