俺様社長と溺愛婚前同居!?


「本当にありがとうございました」

「別に気にしなくていい」


 そうは言うけれど、社長の鴻上さんに病院に連れてきてもらって、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。彼は忙しい人だし、こんなところで油を売っていていいわけない。


「このお礼は、改めてちゃんと……」

「そういうのはいいから」

 足の長い彼は、歩くスピードも速く、ついていくのに精いっぱい。ちょこちょこと小走りしながら、一生懸命ついていく。そしてまた車の前に着くと、助手席を開けてエスコートしてくれる。


「でも、何もしないなんて申し訳ないです。私にできること、何かありませんか?」

「ない」

「そんな即答せずに……何かお役に立てることがあったら――」

「いいから乗りなさい」

「ああっ」


 ぽんっと押されて、私の体はシートの上に収まる。そして運転席に座る鴻上さんは、何も言わずに車を発車させた。


 どうしよう、どうしよう。

 ご飯は食べてもらえないわ、怪我をして病院に連れていってもらうわで、迷惑ばかりかけているような気がする。このままじゃ本契約もしてもらえそうにない。

 花蓮を安心させてあげるためにも、どうにかしてシンクフロンティアさんで契約を取らないと。

 そのためには、鴻上さんの心を掴まないといけない。

 せっかくのふたりきりだし、せめてランチの希望だけでも聞いて、明日から活かせるようにしないと!
< 22 / 177 >

この作品をシェア

pagetop