俺様社長と溺愛婚前同居!?
「あの、鴻上さん。ひとつ質問よろしいでしょうか?」
「……何ですか?」
「いつもお昼を召しあがられないのは、何か理由があるのでしょうか?」
「…………」
意を決して質問したのに、まさかの無回答。
何も答えてもらえず、がっくりと肩を落としそうになるが、諦めずにもう一度質問する。
「皆と食べるのが、嫌……とかですか? もし、それなら、鴻上さんのぶんだけ別メニューをご用意しますよ」
「そういうわけじゃない」
じゃあ、何――!?
こっちは生活がかかっている。
鴻上さんの好みを把握して気に入ってもらえないと、花蓮の大事なお店が守れない。産休をとっている間に倒産なんてことになったら、生まれたばかりの赤ちゃんを露頭に迷わすことになる。
「じゃあ、好きな食べ物を教えてください。鴻上さんが食べたくなるような料理を作ってきます」
好きなおかずなら、さすがに食べてくれるだろう。
そう思って質問したにもかかわらず、その質問にも答えてもらえなかった。
ぽきっと心が折れたところで、車がオフィスビルの地下駐車場に到着し、ふたりきりの時間は終了となった。