俺様社長と溺愛婚前同居!?
「結花さん」
食事の時間が終わり、後片付けをしていると、一人の社員さんがキッチンに姿を現した。
彼は櫻井さんといって、シンクフロンティアの専務だ。
櫻井さんはSランク大学を卒業という高学歴な肩書をもっていて、落ち着いた大人の男性の雰囲気を醸し出している。
細身の身体に、小顔。あっさりとした顔立ちに眼鏡がよく似合っている。この会社にいる人たちは皆長身な人ばかりで、見上げないといけない。
「お手伝いします」
「いや、いいですよ。大丈夫ですよ」
「いやいや。昨日怪我をしたんですよね? 傷口が広がったら大変じゃないですか」
指先に絆創膏を巻いているので、ランチの時間に皆から「どうしたの?」と聞かれた。自分のドジで怪我をしただけだから、あまり言いたくなかったのだけど隠すのも変なので自虐的に話した。
「大丈夫です。ほら、防水の絆創膏をしているから、傷口にも触れませんし」
「でも」
人差し指を見せていると、その指をそっと包み込まれた。
男性の大きな手に包まれて、驚いて固まる。
「これ以上大切な結花さんの体に傷がついてしまったら、僕が悲しい。だから手伝わせて」
いつも物静かな落ち着いた雰囲気の櫻井さんからそんな甘い言葉が飛び出すなんて、予想外で反応できずに目を丸くしてしまう。