俺様社長と溺愛婚前同居!?
「でも……櫻井さんには、お仕事、が……」
「大丈夫、気にしないで」
そう言って、大皿を拭くのを手伝ってくれることになってしまった。
厚意を無駄にするわけにもいかないけど、でも社員さんに手伝ってもらうのも、何か違う気がする……!
「もっと警戒しなさい」と鴻上さんに叱られたことを思い出して、どうにかしないとと考えるものの、どうすればいいか分からない。
もう一度「大丈夫です」と言うべき? 言うべきだよね。
どのタイミングで言い出すか考えていると、櫻井さんが話し出した。
「結花さんは、恋人いますか?」
「え?」
「教えてもらえませんか?」
どうすればいいか悩んでいたところに、そんな質問がやってきて、いろいろな考えが吹き飛ぶ。
恋人……って言った?
その質問に対して驚いている間にも、彼の話は続いていく。
「こんなに料理が上手で家庭的な女性だから、お相手がいてもおかしくないですよね」
「いや……いやいや。いませんよ」
「え……? 本当に?」
「はい。いません。恥ずかしながら、今まで一度もいませんね。はは」
そう答えると、櫻井さんは普段見せないような微笑を浮かべた。