俺様社長と溺愛婚前同居!?


「でも……櫻井さんには、お仕事、が……」

「大丈夫、気にしないで」


 そう言って、大皿を拭くのを手伝ってくれることになってしまった。
 厚意を無駄にするわけにもいかないけど、でも社員さんに手伝ってもらうのも、何か違う気がする……!

「もっと警戒しなさい」と鴻上さんに叱られたことを思い出して、どうにかしないとと考えるものの、どうすればいいか分からない。

 もう一度「大丈夫です」と言うべき? 言うべきだよね。

 どのタイミングで言い出すか考えていると、櫻井さんが話し出した。


「結花さんは、恋人いますか?」

「え?」

「教えてもらえませんか?」


 どうすればいいか悩んでいたところに、そんな質問がやってきて、いろいろな考えが吹き飛ぶ。


 恋人……って言った?

 その質問に対して驚いている間にも、彼の話は続いていく。


「こんなに料理が上手で家庭的な女性だから、お相手がいてもおかしくないですよね」

「いや……いやいや。いませんよ」

「え……? 本当に?」

「はい。いません。恥ずかしながら、今まで一度もいませんね。はは」


 そう答えると、櫻井さんは普段見せないような微笑を浮かべた。
< 27 / 177 >

この作品をシェア

pagetop