俺様社長と溺愛婚前同居!?
「そうですか。だったら、僕と――」
「櫻井。すぐに来い」
櫻井さんが何か言いかけたところに被せるように、男性の大きな声が入ってきた。
誰だろうと振り返ると、眉間に皺を寄せて腕組をして仁王立ちをしている鴻上さんが立っていた。
「社長……!」
「行くぞ」
「はい。結花さん、また明日」
「あ、はい……。お疲れさまです」
鴻上さんからただならぬ気配が漂っていて、仕事上でトラブルが発生したのかと心配になる。
慌てている櫻井さんの背中越しに見えた鴻上さんの鋭い眼光に魂を抜かれそうになった。
「う……っ」
だめだ、私……嫌われている、かも……。
めちゃくちゃ睨まれていた。あれは、殺意に似た視線だ……。
口から魂が抜けそうになりながら、さっさと後片付けを終わらせて帰路につく。
社員さんたちが優しくしてくれるたび、鴻上さんからの風当たりはきつくなるような気がする。もっと粛々と仕事をするべきだと思われているのかもしれない。
でもコミュニケーションをとろうとしてくれている社員さんたちを無視するわけにもいかないし……ああ、もうどうしたらいいの!
次の日は中華料理にしてみたものの、鴻上さんは相変わらず見向きもしてくれなかった。
だよね、そうだよね……と悲しみながら後片付けをする日々。