俺様社長と溺愛婚前同居!?
それでも、鴻上さんは食べてくれないものの、残った料理を「捨てなくていい」とだけ言って退室していく。
残った料理は、保存容器につめかえて冷蔵庫置いて帰るのだけど、翌日には保存容器は空になって洗って干してある。
誰かが持って帰って家で夜食にしてくれているのだろうか。
こちらとしては食品ロスを減らしたいと思っているから嬉しいところなんだけど……一体誰が食べてくれているんだろう?
そんな不思議なことも起こりつつ、お試し期間の時間が残りわずかになってきた。
このまま契約を取れずに終わっていくのかな。
花蓮にいい報告をしてあげられたらよかったのに、と思いながらオフィスビルのエントランスを歩いていると、前から鴻上さんが秘書とともに歩いてきた。
ひえ……っ、鴻上さんだ!
失礼のないようにしなければ、と姿勢を正し、背筋をピンと伸ばす。
「お疲れ様です。失礼いたします」
今日の仕事を終えた私は、軽く頭を下げて伏し目がちにすれ違う。
小さくため息をついて、セキュリティシステムに通行証を通そうとしたところで背後から声がした。
「ハンバーグ」
ん?
何だろう、と振り返ると、鴻上さんはスラックスのポケットに片手を入れて立ってこちらを見ていた。