俺様社長と溺愛婚前同居!?
「結花さんが社長にとお作りになられたそうです」
「……頼んでいないが」
「そうおっしゃらずに。社長もHANAさんのお料理をお気に召していらっしゃるじゃないですか」
廣田にそう言われて、じろりと睨みつけた。
俺よりふたつ年上の廣田は、俺に睨まれても気に留めず平然と微笑む。
高学歴で頭がきれる上、何か国語も話せてビジネスマナーを身に着けている彼は、とても有能な男だ。
しかしこういう一言多いところが、気に障る。
「結花さん、社長がお食事を摂られないことを、とても気にされています」
「余ったものは、食べている」
「そうですが……。結花さんは、それをご存知ではありません。社長のお口に合わないのだろうと悩まれているそうですよ」
ケータリングサービスHANAのおかげで、ランチタイムに全社員が集まるようになった。
俺は社員たちとコミュニケーションを取るのを優先し、食事は後回しにしている。
そもそも社員たちに用意したものだから、俺は食べなくていいと思っている。
「結花さんの目の前でお食事をされたらいいですのに……いつも食べて欲しそうな顔で社長を見つめてらっしゃいますよ」
「わざわざ目の前で食べる必要などない。それより何だ、〝結花さん〟というのは。どいつもこいつも彼女のことを気安く呼び過ぎだ」