俺様社長と溺愛婚前同居!?
できる限りのことはしたつもりだったけど、だめだったかと肩を落としていると、背後から名前を呼ばれた。
「結花さん」
「あ、はい。廣田さん……お疲れさまです」
振り返ると、パーテーションの近くに姿勢よく立っている男性に気づく。彼は鴻上さんの秘書の廣田さんだ。
長身で短髪、甘いマスクの彼は、すごく真面目な印象だけど、顔を合わせるたびににこっと微笑んでくれる優しい人だ。鴻上さんとはタイプの違うイケメン。
鴻上さんといつも一緒にいるがゆえに、余計に優しく見えるのかもしれないけど……。
「結花さん。社長があなたとお話をされたいと申されています」
そして、まさかの鴻上さんからの呼び出し!
これは……まさか、契約の話?
このままフェイドアウトかと諦めていたけれど、ちゃんと話をしてくれるのだと気合が入る。
泡がついた手を水で流して、タオルで拭いて、ぴっと裾を引っ張ってエプロンを正す。
「分かりました、すぐ行きます」
手に汗を握って体を強張らせながら、廣田さんの後をついて長い廊下を歩いていく。
一番奥にある重厚感のある扉の前に立つと、廣田さんが扉をノックする。