俺様社長と溺愛婚前同居!?
娘さんをください!
プロポーズ? された週末に、賢人さんが、うちの両親に挨拶にやって来ることになった。
約束の時間は十時。
約束の時間より少し前に、インターホンが鳴った。
ドアホンモニターに映るのは、シンクフロンティアの社長、鴻上賢人さん。
いつも通りの仕立てのいいフルオーダーのスーツに身を包み、姿勢よく立っている。
「あわわわ……」
夢なんじゃないかと思いながら、扉を開けると、長身の彼は私のことを冷静な目で見下ろしてくる。
「おはよう……ございます」
「おはよう」
本当に結婚するふたりなのか? と聞きたくなるくらいのよそよそしい挨拶。
鴻上さんと電話番号の交換をしたものの、業務連絡のようなメールを数回しただけで、全然仲が深まっていない。
こんな状態で、両親の挨拶にやってくるとは……。ある意味、本気度が伝わってくる。
「まさか本当に来られるなんて思いませんでした」
「当たり前だろう。結婚するんだから」
「でも……」
私たちが結婚するのは、契約上のもの。
花蓮の店をバックアップしてもらうことの条件に、私は賢人さんの専属料理人になる。女嫌いの彼は、害のない私を結婚相手に選び、対価を払って毎食管理させることにしただけのこと。