俺様社長と溺愛婚前同居!?

「……いでっ」


 賢人さんは、私の頬をむぎゅっと優しく摘まむ。


「ちゃんと断っていたのは認めるが、もっと毅然とした態度で断れ。俺と結婚すると言えば、川崎はすぐに引き下がったはずだろう」

「で……でも、内緒に、されたいかなと……」

「内緒にするなんて言っていない。公にするつもりだ」


 そう……なの?


 こんな契約的な結婚なのに、オープンにして大丈夫なの?

 私と結婚するって知られて、恥ずかしくないの?


「だから、ちゃんと俺と結婚するってことを自覚するように。分かったか?」

「……あい」


 もっと嫁としての責任ある行動を心掛けないといけなかったなと反省する。

 ほっぺたを抓っていた手を離されたあと、まだ彼の視線がこちらに向いていることに気づく。
 じっと見つめられて、不思議に思いながら見つめ返す。


 どうしたんだろう……?


 何か言いた気な目が気になって、目が離せないでいると、頬を撫でられる。


「ほんと、お前って奴は……」

「え……?」

「何でもない。今週の土曜日、引っ越し業者の予約を入れた。荷物を見送ったら、俺の家に来るように」


 そう言って、私から離れると背中を向けて、社長室の窓から外の景色を見ているようだった。


 いよいよ同居が始まる……!

 そう考えると、一気に緊張が走る。

 恋人同士じゃないのに、ちゃんとした手順を踏んで、結婚へと確実に進んでいく。

 大きな仕事だと思って、しっかりやらなければ……!


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