俺様社長と溺愛婚前同居!?


「こちらになります。ご自宅は、このキーで開錠していただきます。お渡しするように仰せつかっておりますので、お渡しさせていただきますね」

「はい」


 エレベーターを降りると、ピカピカに磨かれた大理石の床に、汚れが一つもないブラウンの壁。薄暗い中、ダウンライトが照らすラグジュアリー感に溢れた空間が広がっていた。

 ここが賢人さんの住むフロア。

 大きな玄関扉の横には「鴻上」と表札が出ている。


「しかも、玄関の扉、すごく大きい……」


 木製の大きな扉に驚いていると、コンシェルジュさんはにっこりと微笑む。


「では、高梨さま。これからどうぞよろしくお願いいたします。スタッフ一同、高梨さまが快適に過ごせるようお手伝いさせていただきますので、何なりとお申し付けください」

「は、はい」

「それでは、失礼いたします」


 凄すぎる……。

 コンシェルジュさんがエレベーターに乗り込むところまで見届けて、ふうとため息を漏らす。
 ホスピタリティに溢れている丁寧な接遇に圧倒された。

 彼女の完璧な仕事ぶりに、ここは私の知っている世界じゃないなと噛み締める。


 賢人さんがすごい人だと分かっていたものの、ここまでだったとは。


 本当に一緒に住むことになっていいのかな?
 お互いのためとはいえ、本当に結婚するつもりなのかな……。
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