俺様社長と溺愛婚前同居!?
今から急いで可愛いパジャマを買いに行こうかとも考えたけど、でもそれも違うかなと悩む。
賢人さんが私に対して「可愛い奥さん」を望んでいるかどうかも分からないし、変に気合いを入れて引かれても恥ずかしい。
いつも通りの私でいいやと思うことにした。
荷ほどきが半分ほど終わり、壁掛け時計を見てみると、そろそろ夕飯の支度をする時間だ。
先程冷蔵庫の中身を確認させてもらったら、ある程度の食材を事前に用意してくれておいたみたい。
冷蔵庫の中にあるもので作ってしまおうと、キッチンへ向かう。
今日の夕飯は、鶏もも肉のからあげ、れんこんのきんぴら、タコの和風マリネ、ワカメと豆腐と長ネギのお味噌汁と白ご飯。
ピカピカの綺麗なキッチンで料理ができるなんて楽しい。まだ慣れていないから調理道具がどこにあるのか探しながらの手探り状態だけど、時間が経てば慣れるはず。
「賢人さーん、ご飯できたよ」
賢人さんの仕事部屋をノックしてみると、すぐに扉が開いた。
さっきまで顔を合わせていたのに、離れていた時間ができると、慣れがリセットされて彼の格好よさに緊張が走る。
「ありがとう。行くよ」
料理が並んだダイニングテーブルを見て、賢人さんは優しく微笑む。
「美味しそう。たくさん作ってくれてありがとう」
「うん……」
そして向かい合って食事を始める。
気を抜いてしまうと、上品かつ優雅に食事をする賢人さんに見惚れてしまう。
目が合うと「美味しいよ」と優しく囁かれて、胸が大きく跳ねる。
か、格好よすぎる……!
にこっと微笑みかける仕草も、低くて心地いい声も、全部が大人っぽくて。
そんな彼にドキドキしっぱなしだ。
これからの生活、大丈夫かな……と不安になる。
賢人さんは、好きになっちゃいけない人。本気になったら、離婚されてしまう。
気を付けないといけないと気を引き締める。
私は専属料理人なんだから。