好きになってくれない人へ。
「……なるほどね。それで心配になって様子を見てきてくれたんだ」
「まぁ、そんな感じ」
「……優しいね、春輝は」


床にちょこんと座る春輝にコーヒーを渡した。


「でも、そんなに気を使わなくても大丈夫だよ?」
「え、でも……。そのカメラって先輩のお父さんの」
「まぁ、そうなんだけどね」


お父さんとの思い出は、そんなには多くなかった。
プロのカメラマンとして活躍していたお父さんはほとんど家に帰ってこなくて、1ヶ月に2回ほど会えればまだマシで、仕事が忙しくなると、お父さんは帰ってこなかった。
会ったとしても、挨拶をする程度。
お父さんは私に興味を示してくれなかった。
そんなお父さんは、私が中学3年生になってすぐ、交通事故に巻き込まれて死んだ。
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