好きになってくれない人へ。

「その時の私は、コンテストで金賞とか貰えるようなったり、写真展でも活躍できるようになった頃だったから少し落ち込んじゃって……」
「………………」
「それを見かねたお母さんが、お父さんが使ってたカメラを渡してくれて」


お父さんとの話しを黙って聞く春輝。
ほんの少しだけバツが悪そうな顔をしていた。


「ごめんね、暗い話しをしちゃって! もう気持ちの整理もついてるし、私は全然大丈夫だから!」


そう。
大丈夫。
……大丈夫だったはずなんだけどな。
もう使えないって分かると、何だかお父さんを2度も失った気分だ。


「先輩は、嘘をつくのが下手くそ」
「え……」
「毎回そうだよ。「大丈夫」って先輩が言う時は全然大丈夫じゃない時なんだよ。俺、それぐらいもう気づいてるし」
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