好きになってくれない人へ。
「本当に、大丈夫だから……」


大丈夫。
本当に大丈夫なの。


「俺の前では、弱音ぐらいはいてよ。先輩」


春輝は私を強く抱きしめ、小さい子供をあやすように優しく私の頭を撫でた。


「ちょっ、恥ずかしいからやめてよ……」
「ここには俺しかいないよ」


何度も頭を撫でる春輝の手つきがとても優しくて、私はお父さんとの記憶を思い出した。
いつの日だったかもう思い出せないけど、こんなふうにお父さんに頭を撫でてもらった事があったな……。
お父さんを思い出すと、今まで隠してきた寂しさが溢れだし、我慢ができなくなった私は涙を止める事ができず、泣き出した。


「うっ……お父さんっ、うわぁぁぁっ」
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