好きになってくれない人へ。
家族連れや、友達で来た人達、それから恋人同士。


「手、繋ぎますか?」
「え………」


人混みの中、差し出された春輝の骨ばって大きな男の子の手。


「だって先輩、方向音痴でしょ?」
「それは、そうだけど……」


これは、手を繋ぐべきなのだろうか。
春輝の言うとおり、確かに私は極度の方向音痴。
こんな人混みの中、もし迷子になったらと考えると寒気がしてくる。
でも、だからと言ってこれは手を繋いでいいのだろうか。
もし、ここで手を繋いだら私の中で何かが変わってしまいそうな気がする。


「先輩?」


戸惑う私に何かを察したのか、春輝は私の手を掴み、自分の制服のワイシャツを握らせた。


「ここならどう?」
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