好きになってくれない人へ。
何を怖がっているのか分からない。
でも、怖い。


「お姉ちゃん、せっかくの花火大会なのに浮かない顔してんな」
「え……」
「せっかく綺麗な顔してるんだから、もったいねぇよ!」


かき氷屋のおじさんに話しかけられ、私の頭の中に浮かんだのは春輝だった。


「そんなお姉ちゃんに、サービスな」
「あ、ありがとうございます」


頼んでいたイチゴ味の他に、ブルーハワイのかき氷を貰った。


「これで仲直りしてこいよ」
「……はい」


喧嘩をしたわけじゃないんだけどな。
おじさんにお礼を言ったあと、私は春輝のもとに向かった。

私はもう大丈夫。
いつもの私に戻れる。
まるで何かの呪文のように何度も心の中で唱え続けた。
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