好きになってくれない人へ。

仮設キッチンで準備を始めていると、蓮が声をかけてきた。


「なぁ、桜来」
「なに?」
「そんなに気合い入れてるのに裏方担当ってなんか勿体なくね?」
「そう?」
「だからさ、お前もキャストにならない?」


そう来ると思った。
私が見た目を変えた事で、同級生の間でちょっとした噂になっているのは私の耳にも届いている。
本気で最優秀賞を目指している蓮がこれを逃す訳がない。


「嫌だよ。キャストになる為に準備した訳じゃないし」
「そうなのか? なら、何で気合い入れてるだよ」
「それは、内緒」
「……ふーん?」


客引きの効果が出てきたのか、教室内が騒がしくなり始めた。


「チョコケーキ2つお願いしまーす」
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