好きになってくれない人へ。
私が口ごもっていると、春輝が急に声を上げた。


「あー、もうやめやめ! 自分からこの話題振っておいてあれだけど、先輩は今俺とデートしてるから」
「だから?」
「俺以外の男の事考えるの、今日は禁止。今日一日、俺だけ見てて」


そう言うと春輝は1口サイズに切ったレモンタルトを私の口元まで運んだ。


「何これ……」
「せっかくのデートだし、それっぽい事しません? ほら、あーん」
「分かったよ」


渋々、レモンタルトを口にした。


「どう? 美味しい?」
「うん、美味しい」
「でしょ? 俺のオススメ」


自分が気に入っているケーキを私が美味しいと言ったのが嬉しかったのか、春輝は嬉しそうに笑いながらまだ半分以上残っているレモンタルトを私に差し出した。
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