好きになってくれない人へ。


「良かったら、あげます」
「え、何で。春輝が頼んだものでしょ?」
「先輩が気に入ってくれて嬉しかったので、先輩にあげます」


優しさの塊。
本当に女の子の扱いが慣れている。


「なら、一緒に食べよう」
「え……」
「アンタが言い出したんでしょ? 食べ比べしようって」


ポカンと固まる春輝に、仕返しだと言わんばかりに、チェリーパイを口元に運んだ。


「え、え?」
「いや、“デート”なんでしょう?」


コイツ、するのは慣れてるくせに、やられるのは慣れてないのか。


「ほら、早く」
「っ、いただきます……」


照れくさそうにチェリーパイを頬張る春輝。


「どう? 美味しい?」
「……ん、美味しい」
「私、このお店のチェリーパイ気に入っちゃった」
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