好きになってくれない人へ。
「ありがとう。春輝がいてくれて良かった」
しんみりとした空気の中、私達を載せたゴンドラは地面に戻ってきた。
「さ、帰ろうか」
ゴンドラから降り、春輝に声をかけるとそっと手を繋いできた。
「……これで最後だから」
私の手を握る春輝は、まるで小さな子供が泣きそうな、涙を堪えるような表情だった。
「うん、いいよ」
今日は春輝の新しい表情をよく見る日だ。
私は春輝の手を握り返し、テーマパークを後にした。
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繋いだ手を離す事は出来ずに、結局私の家の前まで送ってもらう事になってしまった。
「今日はありがとう。凄くいい息抜きになった」
「それは良かったです。もし何かあったら頼れる後輩が何でも聞きますから」
ついさっきまで泣く寸前の子供のような表情をしていたはずなのに、いつの間にかいつもの春輝に変わっていた。