好きになってくれない人へ。
この他愛のない話をしながら学校に向かう時間が私は好きだった。
ついこの間までは。


「この間席替えしたらさ、茉心ちゃんと席が隣同士になったから少しでも見た目整えたいじゃん?」


“茉心ちゃん”とは最近、蓮が気になっている同じクラスメイトの子の名前。
耳までの長さのストレートヘアが似合う、所謂“カッコイイ系”の女の子。
そして、私の親友。


「なぁー、桜来って茉心ちゃんと友達なんだろ? 何か聞いてない?」
「聞いてないって、何が?」
「何がって、ほら……」


気まずそうに俯く蓮。
つまり、茉心の友達である私が“蓮の事をどう思っているか”という話を聞いているかという事か。


「…………」


なんて答えようか言葉が詰まった。
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