好きになってくれない人へ。
でも、俺の気持ちは今の先輩にとって重荷になる事くらい明白で、何も言葉に出来ないように固く口を閉ざした。

先輩を家まで送り届け、少しはいつもの俺に戻れたような気がした。
余裕のある後輩。
先輩思いの後輩。
いつもの、俺。

大丈夫。大丈夫。大丈夫。
お前ならなれる。

呪文のように何度も心の中で唱え続けた。


「頑張れ」


帰り際に先輩に言った。
頑張れなんて言いたくない。
でも、今の俺が先輩に伝えられる精一杯の言葉。


「……明日から、いつもの俺に戻れよ」


お前なら、やれる。
大丈夫。

何度も言い聞かせた。
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