好きになってくれない人へ。
「夏になるっていうのに肉まん売ってて、買ってきちゃいました。季節外れの肉まんもたまにはいいですよね」
「………うん」
「美味しいですか?」
「うんっ」
肉まんの優しい味が染み渡り、私の涙腺をさらに緩くさせた。
「あー、ほら。泣かないで、先輩」
「うっ、うるさいっ」
肉まんを食べながらポロポロと涙を流す私の姿がおかしいのか、春輝はくすくす笑いながら私の涙を拭った。
「そんなに喜多実先輩の事が好きだったんですね」
「……好き」
「どこが好きなんですか?」
春輝が質問をしてきた。
「優しいところ」
「うん」
「何かあったらすぐに駆け寄ってきて、そばにいてくれるところ」
「うん」