【完】爽斗くんのいじわるなところ。
「じゃああたしの自転車、あっちに停めてあるから……」
自分の自転車をとりに行こうと思ったら
ぐいっと腕を掴まれた。
「え?」
肩越しに振り向くと、爽斗くんは
きゅっと眉根を寄せて、
「とろいダルい面倒くさい。俺の後ろにのればいいだろ」
そんな鬱陶しそうな声、しないで。
「……うん、」
そう言う意味だったって、
気付かなくてごめん。
いつもあたしはそういうの察せなくて
怒らせてばかり。
だけどあたし、
爽斗くんの自転車の後ろに乗るの、
慣れているわけじゃない。
だから、どこに手を置けばいいか分からなくて、
自転車の荷台に掴まってみたら
綺麗な形の冷ややかな目が振り返ってきた。
——ドキ、っとして、
間違えたのかなって思って
反射的に両手を離して見せたら、
「チャリじゃなくて俺に掴まれば。運転しづらいんだよね」
こんなとろいあたしに、
正解を教えてくれる。