【完】爽斗くんのいじわるなところ。
「ねぇ……莉愛」
そう呼ばれて、突然距離が縮まって
思わず目を強く閉じた。
「っ!!」
正直小学生のころみたいに
叩かれたり、髪を引っ張られたりするのかと思って
身を構えたのに。
予想に反して、衝撃は小さかった。
——ボスっと肩に重みが加わっただけ。
……爽斗くんの頭があたしの肩に乗ってる。
「……え、え?」
肩に額をうずめた爽斗くんを見て
混乱していたら、
「……優心部屋に呼んだのって、昨日の俺への仕返し?」
寂しそうな声が聞こえてきた。
いつもの強気な声とぜんぜん違う。
びっくりして目を見開いて、
「仕返しって……?」
落ちこんで見える爽斗くんの黒髪におそるおそる手を伸ばして、慰めるように艶のある柔らかな髪に指を通す。
そっと一度撫でたとき、爽斗くんは小さく言葉を続けた。
「だから……。昨日俺が妬かせたから、やり返したのかって聞いてんの」