【完】爽斗くんのいじわるなところ。
ショックでまた泣きそうになったあたしを見て
爽斗くんが小さく噴き出した。
「……0.9、0.8、」
あ……!
カウントがよみがえった。
仕方なさそうな声色だけど、今度はさっきよりずっとゆっくりのカウントダウン。
一生懸命考えてるんだけど。
「0.2ー、0.いーち、」「遊園地!」
「に、行きたいです……。爽斗くんと……」
ぎりぎりなんとか閃いて滑り込んだのは
遊園地なんてお手軽じゃない場所……。
「……遊園地に?」
爽斗くんの声は気乗りしなそうだ……。
遊園地なんて
あたしと行って楽しいわけないもん……当たり前だよね。
「あ……ううん、嘘。嘘です、お願いは……大丈夫」
固く笑うあたしのすぐ横に座ると、
爽斗くんはスマホをいじり始めた。
……もう聞いてない。
またスマホでゲームし始めるのかな。
はぁ……もっと簡単なお願いにすればよかったな。
本当は最初の5秒で
”もう一回抱きしめてほしい”って
言いたかったんだ。
絶対……言えるわけなかったけどね。