【完】爽斗くんのいじわるなところ。

全身を鏡に映して左右確認していたら
ベランダから物音がして、
どきっと心臓が跳ねる。



「莉愛、もー支度できた?」



爽斗くんがベランダから入ってきて、
あたしを一瞥する。


「……」


あ、特に反応なし……。だよね……。



「こんな格好で大丈夫……?」


「なんか……」


言葉を止めたと思ったら、首を傾げて、眉間に皺……。


え⁉︎ 何? 派手かな…?



いや、派手な訳ないか。
むしろ景色にしっかり紛れる保護色みたいに
地味だと思う。



「……地味すぎた?」


「地味にしたのって、俺が地味にしてろって言ったせい?」



「う…」


見透かされている。


こくりとうなずくと、彼は口元を緩めて。



「ほんとお前従順」



ポンと頭を軽く叩いた。



「……今日、ちゃんと俺のそばにいときなよ」



「……うん、わかった。でもなんで……?」



「遊園地とか行ったら、莉愛って害虫集めそうじゃん」


「が、害虫……」


虫を集めるって最低なこと言いながら
髪すくわないでほしい。



落ち込むよりドキドキが勝っちゃうから。



「じゃあ……念のために虫除けスプレー持っていくね」


「お前ばかなの?」


「え? だって害虫、」




爽斗くんが、気に入らなそうにこっち見てる……。
これ以上怒らせたらまずいから、言葉を止めた。



蚊に効くと謳われているボディ用スプレーのラベルを確認する。



このスプレーじゃ効かない種類の虫ってことかな……。



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