【完】爽斗くんのいじわるなところ。
「もう泣きそうじゃん。そんな震えるくらいなら可哀想だしやめよっか」
ふっと、優しい笑顔が向けられて。
「え……え……?ほんとに? いいの?」
「俺だって嫌がってるひとを無理やり入れたりしないよ」
ぱぁっとあたしにも笑顔が移る。
「なにより、莉愛のためだしね?」
や……優しい。
なんで今日はこんなに優しいの……?
お化け屋敷なんておどろおどろしい場所を背景に
爽斗くんの周りだけがきらきらと輝いて見えてくる。
もう…感謝の涙が出そうだよ……。
感動を噛み締めて喜んでいたら。
「高校生二枚ください」
そう聞こえた。
はっとして顔をあげると、
お化け屋敷の入場券販売スタッフから
受け取った二枚のチケットを
片手でチラつかせて
にやりと笑う、とってもいい顔をした彼がいた。
小首をかしげ、さらりと動く彼の黒髪。
「なんて、嘘。苦手は徹底的につぶさないとね」
「いっ、いやぁぁぁ!!」
「声うるせー」
……彼は悪魔だった。