【完】爽斗くんのいじわるなところ。
しおらしい爽斗くんの瞳がいまだあたしに向いていて、


ドクドクと心臓が速まっていく。


こんな爽斗くん、知らないんだもん……。



「あの、もういいよ……! ていうよりも、本当は”いいよ”って言おうと思ったけどちょっと意地悪しちゃったの……」


「は……?」


「あたし、爽斗くんのこと、ぜったい嫌いになったりしないよ」


「……。へぇ、あっそ」



すると爽斗くんは
こころなしか頬を赤らめたかと思えば
ふいっと顔をそむけて立ち上がった。





「……なに可愛いこといってんの?」




ちょうどそのときすぐそばを駆け抜けていった小学生の笑い声で、
爽斗くんの言葉が聞き取れなかった。



「何か言った?」


「なんでもない。のど乾いたし、そこで飲みもん買ってくる」


「うん」



頷いて、しばらくぼうっとしてた。


さっきの爽斗くん、
ほっぺ赤かったよね……? いや、そんなわけないか……。


って!


飲み物、爽斗くんのリュックの中にあるんだった……!


そう思って追いかけようとしたら

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