【完】爽斗くんのいじわるなところ。
「なぁ、何。俺、なんかした?」
「……ちがうの。あたし、申し訳なくて」
「なにが」
「あんなお弁当食べさせちゃってごめんね」
「はぁ?」
ガバッと体が離れて、絡む視線。
「どういうこと? なんで謝んの」
「だって」「莉愛ちゃーん、大丈夫ー?」
遠くから聞こえた声。そっちをみれば優心くんが大きく手を振っている。
「……ちっ、」
会話が途切れて、
いま、爽斗くんの舌打ちが聞こえた気がする……。
「ふたりの弁当の見張りは今、仁胡ちゃんがしてるから平気だよ~」
「え……と、じゃあ仁胡ちゃんと優心くん一緒に来たの?」
「そうそう。ふたりのデートが心配で?」
彼は爽斗くんを見て、にんと笑ってから、
「案の定莉愛ちゃん泣かせてんじゃん、サヤ」
「うっざ……」
「はは。てかさー、お弁当つまみ食いしちゃった。莉愛ちゃん料理上手だね。すげーおいしかった」
「え……そんなわけないよ、だって冷えてるし」
「弁当ってそういうもんでしょ? うまかったよ」
優しく笑う優心くんに、
すくわれていくみたいだ。
「……ありがとう」
おいしいなんて、お世辞に決まってるのに。
嬉しくて、嬉しくて。
口許に笑みがこぼれてしまった。
「莉愛ちゃん、今度俺にも作ってよ?」
この甘えっぽい声には逆らえない。
「うん」
いつの間にか笑顔で頷かされている。
「やったー」
優心くんと会話をしていたら、
爽斗くんが強くため息を吐いた。
「……じゃあ残り全部優心と食べれば?」