【完】爽斗くんのいじわるなところ。
苛立った声に気づいて、ハッとした時にはもう遅かった。



「莉愛すごい楽しそうじゃん。さっきまであんなに黙り込んでたくせに」


「……、それは」


「なんで優心と喋ったら一瞬で機嫌よくなんの?」



そんなの……。


爽斗くんに食べさせてしまったものが


美味しかったって言ってもらえたんだから


安心するでしょう……?



「……なんか言い訳してみれば?」


「でも。だって、爽斗くんもずっと黙ってたよね……?」


「……まぁ黙ってたね」


「おいしくなかったんでしょ?」「そんなわけないだろ」



語尾に重なった爽斗くんの声。



おくれて爽斗くんの視線が優心くんに向いた。


たぶん、優心くんに聞かれたくなかったんだと思う。



だから、あたしの腕を強く自分の方へと引いたんだ。



そして、およそあたしにしか聞こえない小さな掠れ声を耳もとに落とす。




「ちゃんとおいしかった。弁当が嬉しくて、喋るの忘れただけ」



ドクンと心臓が大きく鳴った。

嬉しくて喋るの忘れたって……。

なに……それ……?


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