【完】爽斗くんのいじわるなところ。


夏祭り当日は、たしか登校日で。
女子みんなで約束して浴衣まで準備して、あたし、たぶんはしゃいでた。


楽しみで仕方なくて、いちばんに待ち合わせ場所についたんだ。


わくわくしてた。茜色の空に連なる赤い提灯とか、屋台の光の明るさとか、今でもはっきりと覚えているくらい。



しばらくしたら、爽斗くんが来たんだ。


またいじめられるって思ったし正直二人きりは嫌だった。


挨拶したかどうかも怪しい。


爽斗くんはいつもの私服で、男子は浴衣着ようって約束しなかったんだなって思ったんだ。



『……なんでそんな恰好してんの?』



そう切り出した、不機嫌な彼とどんな会話したか、この辺から記憶が曖昧だ。



それくらいひどいことを言われた気がする。



 『根暗は家にいろ。お前がいると盛り下がる』


肩をドンと押されて、よろけたあたしはしりもちをついて、石畳にへたりこんだまま爽斗くんを見上げた。



『さっさと帰んなよ』



そんな姿を道行く人がちらりと横目にみて過ぎていく。


すごく惨めだった。


泣きながら家に帰ったんだ。



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