【完】爽斗くんのいじわるなところ。
なんだかさっきから爽斗くんから漂う不機嫌なオーラがすごい。
あたし、なにかしちゃった……?
「ごめん……」
とわけもわからず謝ってしまって
「何に対して謝ってんの? まじでうざい」
余計怒らせる始末……。
「つーか莉愛さ、」
ベッドの下の床にすわったあたしを上から見下ろす爽斗くん。
身を乗り出してあたしの顎を指先がもちあげた。
茶色の瞳と視線が絡む……。
「……祭りに好きな人を誘っても、相手は楽しくないんじゃないの?」
「え……」
「だって莉愛、自分から喋んないし。一緒に居たってつまんないでしょ」
「……それって、」
爽斗くんがあたしに対して、思ってる気持ち?
一緒にいて、つまんなくて迷惑?
じわりと目の奥が熱くなっていく。
「好きな人を退屈させたくないならさ、」
指先があたしの顎から外れる。
涙で歪む視界の奥で、彼は片側の口角を上げて言う。
「……根暗は家にいろよ」
——ドクンと心臓が音を立てる。
見えるはずもないのに、あの日の茜色の空と真っ赤な提灯の列が見えた気がした。
体はあのときのショックを覚えているみたい。
涙がぶわっと溢れて。
まるで全身が凍り付いたみたいだ。
「……ふ。うぅ……っ」
俯いて顔を両手で覆いながら泣くあたしの頭上に、冷たい声が落ちてきた。